◎内容◎
「かなしき女王」とは、ケルト神話の女戦士スカァアのこと。スカイ島の名の由来となったとされる、この美しく猛々しい女王と英雄クウフリンの恋と戦いの物語こそ、スコティッシュ・ケルトを代表する物語である。輪廻転生を信じる土着信仰ドルイドと古代キリスト教が入り交じった幻想的な短篇12篇に、新たに戯曲「ウスナの家」を収録。いずれも松村みね子の名訳による。◎収録作品◎
『海豹』
『女王スカァアの笑い』
『最後の晩餐』
『髪あかきダフウト』
『魚と蠅の祝日』
『漁師』
『精』
『約束』
『琴』
『浅瀬に洗う女』
『剣のうた』
『かなしき女王』
戯曲『ウスナの家』
解題『アイルランド文学翻訳家 松村みね子』 井村君江
松村みね子翻訳年譜一覧 井村君江・編
解説『ケルトの幽冥』 荻原規子
◎著者◎
フィオナ・マクラウド
1856‐1905。本名ウィリアム・シャープ。英国スコットランドのグラスゴー生まれ。若い頃からゲールの幻想物語に興味を持ち、1892年『異教評論(ベーガン・レヴュー)』出版を皮切りにケルト文化復興の活動を始める。シャープ名でオカルト研究に従事する一方、マクラウド名で幻想物語を発表。死後同一人物であることが明らかにされた◎翻訳者◎
松村みね子
1878‐1957。本名片山廣子。東京麻布生まれ。東洋英和女学校卒業後、佐佐木信綱に師事し、歌人として活躍する。一方、大正5(1916)年頃より、ダンセイニ、シング、マクラウドなどアイルランド文学の翻訳にも従事。森鴎外、上田敏、坪内逍遙、菊池寛らに高く評価され、また堀辰雄『聖家族』のモデルとされる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
現代ファンタジーのようなエンタメ性は無いので、人によっては面白くないと思いますが、スコティッシュ・ケルトの宗教観が伝わってきます。Amazon.co.jpで『キリスト教とケルト伝説の素敵なマリアージュ』というレビューで、「一言で言うとキリスト教とケルト伝説の美しい融合だろう。前者に傾倒していることを思わせるようであり、後者の方もしっかり堪能できる。それも全く無理がない。」と書かれていましたが、同感です。破滅的な話が多いと感じました。
松村みね子氏の訳は、古風で読み辛いですが、現代的な訳では良さは伝わらないでしょうね。文章表現はとてつもなく美しい。フィオナ・マクラウド氏の残酷だが妖艶なスコティッシュ・ケルトと、松村みね子氏の大正の幽玄な日本語訳が渾然一体となった世界に連れて行かれそうです。
井村君江氏の解題は、フィオナ・マクラウド氏の事だけじゃなくて、松村みね子氏の事も知りたかったので、松村氏に関する事柄が沢山書かれていてとても勉強になりましたし、明治~昭和初期の文壇の息吹が感じられる名解説でした。
荻原規子氏の解説も秀逸。
ブクログでも紹介してます。
Cynara